ネーレーイス(古希: Νηρηΐς, Nērēïs)は、ギリシア神話に登場する海に棲む女神たち、あるいはニュムペーたちの総称である。ネーレーイスは単数形で、複数形ではネーレーイデス(古希: Νηρηΐδες, NērēÏdes)。長母音を省略してネレイス、ネレイデスと呼ばれる。英語ではネレイド。
彼女たちは「海の老人」ネーレウスとオーケアノスの娘ドーリスの娘たちで、姉妹の数は50人とも、100人ともいわれ、エーゲ海の海底にある銀の洞窟で父ネーレウスとともに暮らし、イルカやヒッポカムポスなどの海獣の背に乗って海を移動するとされた。
海王星の第2衛星ネレイドはネーレーイスにちなんで名付けられた。
神話
大半のネーレーイスは独立の神話を持たず、これらの叙事詩では名前を数え上げるために海にちなんだ名や水と関連する名をつけたとも推測されている。
主なネーレーイスには、ポセイドーンの妻であるアムピトリーテー、トロイア戦争の英雄アキレウスの母テティス、アイアコスの妻プサマテーなどがいる。また、ネーレーイスは美しいことで知られ、ガラテイアはキュクロープスのポリュペーモスに恋慕された。ペルセウスの伝説では、カッシオペイアが自分の娘であるアンドロメダーのほうがネーレーイスよりも美しいと言ったことがポセイドーンを怒らせている。
文献別リスト
ネーレーイスのリストについてはヘーシオドスの『神統記』243-62行 に列挙されており、ホメーロスの『イーリアス』第18巻39行 以下においても、親友パトロクロスの死を悼むアキレウスの母テティスの周囲に仲間たちが集まってくる場面で、ネーレーイスの名前が列挙されている。この他にはアポロドーロスの『ビブリオテーケー』1巻2・7、ヒュギーヌスの『神話集』序 でもネーレーイスの名前についての記述があるが、アポロドーロスのリストはヘーシオドスのものと類似しており、対してヒュギーヌスはホメーロスと類似している。
これら4文献に共通のネーレーイスは、アガウエー、アクタイエー、ガラテイア、キューモトエー、スペイオー、デュナメネー、ドートー、ネーサイエー、パノペー、プロートー、ペルーサにとどまる。アムピトリーテー、テティス、プサマテーといった有名なネーレーイスですら、必ずしも挙げられてはいない。
以下にリストを挙げる(同一文献における重複は除く。『イーリアス』はテティスを含む)。
脚注
注釈
脚注
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- オウィディウス『祭暦』高橋宏幸、国文社(1994年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
- ホメロス『イリアス(下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年) ISBN 4003210220
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
関連項目
- ネレイド (衛星)
- オーケアニス
- ナーイアス


